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京大芦生原生林(下谷〜上谷〜櫃倉谷)

京都北山2008年5月31日〜6月1日山中テント泊
行程[行動時間]
1日目 須後〜(内杉谷林道)〜ケヤキ坂〜下谷〜中山〜長治谷作業所テント場[5時間30分]
2日目 長治谷作業所テント場(枕谷散策)〜上谷〜杉尾坂〜櫃倉谷〜須後[7時間]
メンバー:トモさん、キュウさん(報告者)

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穏やかな芦生の谷に赤翡翠の姿を求めて

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久しぶりの京大芦生原生林。8年ぶりくらいだろうか。自宅からは遠いが、実家(綾部市)と美山町は隣接しており、実家から登山口まで車で2時間程度。帰省を兼ねて新緑の芦生をのんびり歩くことにした。そして今回の最大の目標は、この時期南から渡ってきた赤い鳥“アカショウビン(赤翡翠)”を見ること。声は奈良の和佐又などで例年耳にするが、姿は一度も見たことがない。

下谷
下谷。

5/31(土)1日目 梅雨入り目前。芦生なら雨もまた良し。


昼前後にまとまった雨が降るという予報で出発を遅らせる。登山口に12時頃着。今にも降り出しそうだが時間が時間なので、登山届けを提出し、歩き出す。ケヤキ坂までの2時間の林道歩きは特に見所もなく、ただ黙々と歩く。林道脇のいたるところに咲くピンクのタニウツギだけが慰めだ。


ケヤキ坂には1台の小型マイクロバスと20名くらいの登山者、そしてガイドの人がいた。芦生原生林はもちろん車両侵入禁止だが、美山町が主催する自然ツアーは例外。ブナノ木峠方面へ登っていった。


再び静かになった林道を下る。と、比較的近くでアカショウビンの声がこだまする。立ち止まってあたりを見渡すが姿は見えない。あきらめて30m程歩いたところで、こちらの気配に気付いて何かが飛んだ。アカショウビンだった。しかし、あまりに一瞬で木立に消えてしまったため、“見た”とは言えない。林道から見下ろす絶好の位置に留まっていたようで、何ともくやまれる。


適当なところで林道から下谷の沢沿いに降りる。保存木のトチやカツラの巨木が出迎えてくれる。上谷のようなはっきりした道はなく、沢に沿って適当に歩けば良い。踏み跡がかすかにあるが、踏み跡を忠実にたどらないほうがインパクトが少なくていいだろう。


ポツポツ小雨が降り出したので、林道にもどり、時々木陰で雨宿りしながら長治谷へ急ぐ。霧が立ちこめ、肌寒さを感じはじめた頃、テントが2基、霧の中からかすかに見えてきた。18:00、長治谷作業所テント場着。今夜は我々を含めて3パーティー、計7名。時折小雨が降り、ジュウイチを除けばコノハズクやヨタカが鳴くわけでもなく、静かに夜は更けていった。



タニウツギ
タニウツギ。

下谷
下谷。

トチの木
トチの巨木。

カツラの木
カツラの巨木。

 長治谷作業所テント場
長治谷作業所テント場。




6/1(日)2日目 由良川本流を遡り、支流櫃倉谷を下る。
        途上、赤翡翠とのかけひきを楽しむ。
トチの巨木
いろんなものに寄生されたトチの巨木。


3:30に起床して朝食をとり、白みはじめた5時頃から枕谷を散歩する。あわよくばアカショウビンに出会えるかと期待したのだが、鳥はオオルリ、カケス、ミソサザイ、カラ類のみで、適当な場所で引き返す。


6:30にテントを撤収し、上谷へ。間もなくヤマセミ(と思われる)声を聞いたが、姿を見ることもなく下流方向へ飛んでいった。


上谷はつくづくトチの谷である。目立つ大きな木はすべてトチの木。ブナもいいが、これだけトチばかりだとなかなか圧巻である。そして、ちょうどトチの花が満開だ。ミツバチがいたら、いい蜜がたくさんとれるのに。


それまでの平たんな道がやや傾斜するようになり、標高が上がるため、今度はブナが目立つようになってくる。やがて沢の流れがか細くなり、由良川の源流部を過ぎると、すぐに杉尾坂に着く。遠くの稜線の木のてっぺんにジュウイチの姿を確認。


杉尾坂からやや急な道を下ると、ほどなく林道に出会う。その林道を左に70mほどいった所が櫃倉谷の入口。15分ほど急坂を下り切って櫃倉谷に降り立つ。


今日は快晴。登山靴から長靴に履き替え、初夏の沢歩きを楽しむ。櫃倉谷に長靴は必携と聞いていたので持参したわけだが、まさにその通りで、何度も渡渉するため長靴だとストレスがない。沢靴が一番いいのだろうけれど、流れが浅いので長靴でも十分だ。


左岸が大きく開けた気持ちの場所で休憩する。間もなくアカショウビンが鳴き出した。離れた斜面の上にいるので姿は見えない。そこで口笛で鳴き声を真似、誘ってみた。「ヒュルルルルル〜」。すると間髪を入れずに向こうも「ヒュルルルルル〜」。えっ、ウソ?反応した?もう一度「ヒュルルルルル〜」と吹くと、こちらが吹き終わらないうちにに向こうも「ヒュルルルルル〜」。たしかに反応している。おそらく、求愛のさえずりではなく、なわばりを侵したことにより威嚇であろう。しかも、何度も繰り返すうちに距離がだんどん縮まってくる。周囲のトチの木の葉っぱではっきりわからないが、我々の頭上を右に行ったり左に行ったりもしている。そして遂に、自分たちの真上を飛ぶ姿をはっきりと見ることができた。青空をバックに不自然とおもえるほどの燃えるような朱色。翼は一部が半透明のようで、陽光が透けていた。直後下流から人が来たのでアカショウビンは飛び去ってしまった。ちょっと残念。でも確かに見た。


櫃倉谷に危険な所はない。一箇所小さな滝を高巻くところがあるが、木の根やフィックスロープをしっかり持てば大丈夫だ。それにしても櫃倉谷は他の谷にくらべて岩が少なく、土が多い気がする。標高差が少なく流れが緩いことと関係しているのだろう。


中ノツボ合流点の沖積地から、なんと大勢のこどもの歓声が聞こえてくる。ツリークライミングと呼ぶのであろうか、トチの巨木の太い枝に何本もロープをかけ、登攀器で登り降りしたり、ブランコよろしくぶらぶら揺れして戯れている。はるか頭上にはハンモックも。どこかのクライミングジムが京大の許可を得て企画したイベントのようである。


この沖積地から左岸の斜面を少し登って横山峠を越え、下って沢を渡渉(簡易な橋が架けてあった)したら櫃倉林道に出る。「次は木にとまって静止しているアカショウビンの姿を見よう!」とトモさんと会話しながら、1時間ほどの林道歩きで今回の山行を仕上げた。13:30、駐車場着。



枕谷
夜明けの枕谷。

テント場の朝
テント場の朝。

モリアオガエルの卵
水たまりの上の木の枝にはモリアオガエルの卵。

トチの花
満開のトチの花。

トチの木のうろ
トチの木のうろ。8年ぶりの再会。

ヤブデマリ
ヤブデマリ。

サワフタギ
サワフタギ。

櫃倉谷
長靴を履いた姿はどうみても畑のおばちゃんだ。

櫃倉谷
櫃倉谷。

鹿の骨
鹿の腰の骨?

木登り
木登り遊び?楽しそう。

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久木朋子の木版画