台高山脈縦走(高見山〜大台ヶ原)

■台高山脈■2009年4月30日〜5月4日■テント泊
■行程[行動時間]
1日目 高見峠(大峠)〜高見山〜高見峠(大峠)〜伊勢辻山〜国見山〜明神平[6時間20分]
2日目 明神平〜千石山〜赤グラ山〜池小屋山〜弥次平峰〜霧ノ平[10時間]
3日目 霧ノ平〜馬ノ鞍峰〜地池越〜山ノ神ノ頭〜ブナノ平[7時間50分]
4日目 ブナノ平〜父ヶ谷の高〜振子辻〜引水サコ〜添谷山〜大台辻[9時間]
5日目 大台辻〜川上辻〜大台ヶ原駐車場〜日出ヶ岳〜正木ヶ原〜大蛇グラ〜シオカラ谷〜大台ヶ原駐車場[6時間]
■メンバー:トモさん、キュウさん(報告者)

5月2日(土)3日目 エスケープできないから歩行は慎重に。

ブナノ平

ブナノ平のブナの芽吹き。


疲れているわりには眠りが浅い。コノハズクは夜通し、未明からはトラツグミが盛んに鳴く。暗いうちにパンの朝食とパッキングを済ませ、5:30に出発。


今日は手を使わなければならないやせ尾根の岩場が多く、時間のわりには距離が伸びない。縦走路の中程であり、怪我でもしたら大変だ。万一の場合、馬ノ鞍峰から三之公にエスケープできるが、林道三之公線が土砂崩れで通行止めなので登山口に人はいるはずもなく、入之波温泉まで延々と歩かなくてはならない。


馬ノ鞍峰からは、広く歩きやすいところと、いやらしいやせ尾根が交互する。高野槙もけっこうある。

9:10、キャンプ適地の地池越に着く。水場は3〜4分東に降りたところ。湧き出し口で汲めるので、きれいな水を確保できる。ただしテント場は狭く、3張が限界か。

地池越

地池越。ここを下ると水場。


山ノ神ノ頭を過ぎても相変わらずアップダウンの繰り返し。天気予報で晴れと聞いたときは嬉しかったけど、予想以上に暑くて、ちょっとは曇ってくれと願いたいほど。

やせ尾根

登りも下りも急なのだ。


13:20に幕営予定のブナノ平に着いた。まだお昼過ぎである。次の水のあるキャンプ適地は振子辻の先の鞍部で、そこまでは約3時間。行こうと思えば行けなくもないが、これまでのアップダウンがジャブのように体力を消耗。やめとこうと判断するのにそんなに時間はかからなかった。

ブナノ平

ブナノ平。


水場の近くに農林水産省の真新しい雨量観測設備ができていた。久しぶりに見る人工物。ヘリで資材を運んで建てたのだろう。ソーラーパネルで発電し、データをアンテナから飛ばすようだ。

水場は流水であるが、雨量観測設備から谷に降りて少し上流にいったところで数メートル伏流しており、地表に出たばかりの伏流水を汲むときれいだ(と思う)。

文字通り、ブナノ平は立派なブナの林。枝先をよく見るとうっすらと芽吹いている。日が差し込んで明るいこの時期もいいが、初夏や秋も最高のキャンプ適地であることは疑いない。


馬ノ鞍峰へ

馬ノ鞍峰へ向かう。


馬ノ鞍峰

馬ノ鞍峰山頂。


シャクナゲ

シャクナゲ。


山ノ神ノ頭へ

山ノ神ノ頭へ。広い尾根では道迷いに注意。


やせ尾根

山ノ神ノ頭を越えるとだんだん歩きにくくなる。


ブナノ平へ

ブナノ平への下り。前に迷ったのでもう迷わない。(2007/4/14〜15)


水場

雨量観測設備。これを目当てに降りて行くと水場。


水場

水場。


5月3日(日)4日目 日本一の降雨量、大台の水は旨し。

大台ケ原

御座グラから眺めた大台ケ原。だいぶん近づいた。


今日の幕営予定地は大台辻。大台ヶ原まで行けなくもないが、午後2便しかないバスには間に合わないだろうし、間に合わなかった場合、大台ヶ原一帯はキャンプ禁止なので泊まることもできない。やはり大台辻までが無難だ。
今日も晴れ。1日くらいは雨を覚悟していたのに、ずっと晴れ続きで、なんだか明日が怖い。センダイムシクイのさえずりを聞きながら出発。

父ヶ谷の高を過ぎるとしばらくはシャクナゲのトンネルが続く。ザックにくくりつけたマットが何度もシャクナゲに引っかかる。時々見事に開花したシャクナゲに目を止める。

2つの1094メートルピークを越え、再び大きく登り返すところが杉又高で、ここはピークは踏まず右に大きく曲がる。次に大きく左に曲がるところが振子辻だが、地図では振子辻は少し手前に記してある。間違いだろうか。

振子辻から下りきった鞍部も水場のあるキャンプ適地で、雰囲気は地池越に近い。ここもテントは2〜3しか張れなさそうだ。水場はちょっと遠くて片道10分ほどかかる。

キャンプ適地から1時間ほどで引水サコに到着。登山道と平行してすぐ下に沢があるから、うっかり見落とすことはないだろう。大台辻には水場がないので、ここで全ての容器に水を詰め、さらに体を拭いたりラーメンをつくったりしてゆっくりと過ごした。


御座グラは大台ヶ原方面の展望が広がる岩場。似たような風景が続く台高縦走路の中では印象に残る存在だ。御座グラ前後の30分ほどは急斜面なので、注意が必要だ。御座グラでゆっくり休憩しようと思っていたが、ザックを降ろせるような小広いところはなかった。


本日最後のピーク添谷山は見晴らしもよく、休憩に最適。ほどなくしてヘルメット、銀塩一眼カメラ、ジョンレノン風丸縁サングラスといういでたちの、クラシカルなおじさんが登ってきた。今日は引水サコで幕営とのこと。

添谷山

添谷山山頂。


添谷山で縦走の核心部は終了。その後は、たいした急斜面も岩場もブッシュもない。そして14:40、大台辻に着いた。


テントを設営。さて、水である。大台辻に水場はない。最低限の水は確保してあるが、日中の発汗の影響で夜はかなり喉が渇きそう。地図で一番近い水場を確認すると、筏場に降りる道の途中に銀嶺水という水場がある。この筏場道は台風の影響でところどころ決壊しており通行禁止であるが、自己責任ということでトモさんを残して一人で汲みにいくことにした。実際行ってみると山ヌケや橋が落ちていたりで、たしかに危険。銀嶺水にたどりつくまで30分近くかかってしまった。しかし銀嶺水と名前が付けられているだけのことはある。冷たく美味しい湧き水を飲めるだけ飲んだ。

シャクナゲ

父ヶ谷の高を過ぎるとシャクナゲのトンネル。


境界標識

踏み跡うすいこのあたりで頼りになる県境の標識。


引水サコ

引水サコでゆっくりラーメン。


御座グラ

御座グラの岩場。


大台ケ原

御座グラから大台ヶ原を眺める。


サルノコシカケ

サルノコシカケにコシカケル。


大台辻

大台辻。


水場への道

水場への道。崩れている。


銀嶺水

銀嶺水。美味しい水だ。


5月4日(月)5日目 もっともっと歩けそうな気がした。

尾鷲

日出ヶ岳山頂から眺めた尾鷲の海。すぐ近くのような気がする。


トラツグミやジュウイチ、ツツドリ、ミソサザイの声で朝早く目が覚める。14:45のバスまで十分時間があるのだが、天候がおもわしくないこともあり、すみやかにテントを撤収し、6時前に出発。川上辻までおおむね道は快適。だが橋が崩落したところもあって、注意が必要。そういう場所は大概ロープが設置してあり、助かる。金明水で最後の水補給。岩の割れ目からゴボゴボと清水が溢れ出る、最高の水場だった。


川上辻に着いた。ここから稜線を歩いて直接日出ヶ岳に行くこともできるのだが、通行禁止の看板とロープが設置してある。禁止理由が危険だからとかだったら無視しただろうが、植生保護のためと書いてあるので、おとなしく指示に従い、車道を歩いた。


車道を大台ヶ原駐車場に向けて歩く。車が次々に我々を追い越していく。何日もかけてここまでたどり着いたのに、はなはだ興ざめである。


駐車場の奈良交通バス停で念のため発車時刻を確認。係の人に「早めに並ばないと満員で乗れないないようなことはありますか?」と訪ねると、2番と3番の番号札を渡された。発車時刻が近づくと若い番号の人から乗り込めるという。ちなみに運賃を支払うのは普通の路線バスと同じ降車する際だ。


日帰り登山の人たちにまじって日出ヶ岳に登る。山頂付近は木の階段が整備され、縦走のフィナーレを迎える者には違和感を感じる。全国的に知られる一大観光地なので仕方ないか。山頂から見た尾鷲の海は、意外にも近かった。大台ヶ原から尾鷲に達する尾鷲道もいつかは歩いてみようかな。


台高縦走、これにて終了。このまま駐車場に戻っても4時間以上バスを待たなければならないので、東大台を周遊することにした。重い荷物を背負ってさらに3時間近く歩くことになったが、さほど苦痛ではなかった。むしろランナーズハイに近いような状態だったかもしれない。まだまだ歩けるような気がした。

石垣

大台辻からの道。ところどころ古い石垣がある。


金明水

金明水。美味しい水だ。


川上辻

川上辻。


日出ヶ岳

日出ヶ岳。なにはともあれゴールなのだ。


バス

上市駅まで1時間40分バスで爆睡。(トモさん)


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久木朋子の木版画