トンネル西口から10時前に歩き出す。登山口からすぐのところに左の斜面を急登する道があるが、ここは下山時に使用するとして、弥山への登山者に混じり沢へとまっすぐ進む。橋を渡ると通常の尾根に取り付く道には行かず、すぐ左折して沢沿いのコースを進む。この道ははじめてだが、最新の昭文社の地図にも記されるようになったし、問題はないだろう。それよりもどんよりした空模様が気になる。
はっきり言って、この沢沿いの道はおすすめだ。テープはないが道はよく踏まれていて迷うことはない。何より、つづら折れで傾斜がゆるく、ゆっくり歩けば息があがることはない。弥山へ行くときも、今度からはこの道を利用しよう。ミソサザイは終止ご機嫌にさえずっている。尾根道よりも少し早い45分くらいで奥駆出合いに出る。雨が降ってきたのでレインウェアを着て奥駆道を行者還方向へ出発。
奥駆出合いからはシロヤシオやカエデが多い。特にシロヤシオ。花はほとんどが散ってしまっているが、葉っぱも幹も味があって、大好きな樹のひとつだ。2週間前くらいだったら最高だったろうな、と思う。
途中、荒廃した一ノタワの避難小屋の中をチェックする。トタン張りで、床はなく、戸も窓も朽ちているが、雨宿り程度なら使えるだろう。昭和30年代の落書きがあったのでその古さが伺える。
アップダウンを繰り返す。といってもたいしたアップダウンではない。木々もまばらで日本庭園のような風情があり本当に快適な稜線歩きだ。降ったりやんだりと天候は悪いが、霧に煙る感じがいかにも大峰的。鳥を見るにはデメリットではあるが。途中、樹にあけられた穴の中から幼鳥が親鳥を呼んでいるのか、ヒーヒーと叫ぶように鳴いていた。たぶんコゲラだろう。
クサタチバナの群落は思った以上に広く、すぐにそれとわかる。蕾と開花したのが半々で、ちょうどよいタイミングだった。かすかな香りも色合いも、控え目でよろしい。カメラにおさめる。
そこから行者還避難小屋へは十数分で着いた。休まず行者還岳をめざす。途中ハシゴを登り、ほどなくして山頂に立つ。付近にはこの時期毎度毎度のギンリョウソウがあちこちにある。前回来たときもそうだったが、避難小屋から行者還岳にかけてはギンリョウソウが多い気がする。霧で山頂からの眺望は得られず虫も多かったので、着くやいなやくるりとUターンしてすぐに下山。ハシゴのところにある水場はこの日は水がよく出ていた。しかし涸れることもあると聞いているので、あてにはしないほうがいいかもしれない。
行者還避難小屋に戻り、やや肌寒いので内部で昼食をとる。ロフトのあるひと部屋と、ふつうの部屋がひとつあった。建って数年しか経っていないので、清潔感があり、毛布も置いてあった。ステンレスの流しもあり、蛇口から水も出た。さきほどの水場からホースで引き入れているようだ。外から出入りするトイレもチェックしてみた。仕方がないのだが、こちらはお世辞にもキレイとはいえない。使用するのはちょっとためらわれる。
いい時間になってきたので来た道をひき返す。トモさんが手をかいているので見てみると、5カ所ほどブヨよりもっと小さな羽虫に手を刺されてかゆそうだ。なんで僕がひとつもさされず私ばっかりが…と機嫌が悪い。こういうときは何を言っても怒られるので、黙々と足早に進む。そのおかげで意外に早くトンネル西口にまっすぐ下る分岐に着いた。ここからはかなり急。今日のように濡れているときは滑らないようにふんばりふんばり歩くので、時間もかかるし疲れる。こうして16時トンネル西口に到着。泥だらけだけど、このままクルマに乗り込み、家路を急ぎましょう。
(鳴いていた鳥)
ミソザザイ、オオルリ、コルリ、カラ類、ジュウイチ、ツツドリ、ホトトギス、コゲラ、アカハラ、キビタキ、ウグイス
(見た鳥)
ジュウイチ、カラ類、コゲラ
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沢沿いの道を行く
奥駆出合
花の落ちたシロヤシオ
地面にはカエデが一斉に芽を出していた
行者還避難小屋まではゆるやかなアップダウンの歩きやすい道
ヒメレンゲ
クサタチバナ
クサタチバナの群落
行者還避難小屋
行者還岳頂上
ギンリョウソウ
頂上近くに咲き残っていたシャクナゲ
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