宿と食事とトイレと高山病について(2010年10月)

山での宿泊 〜ロッジ〜

個人トレッカーは、シェルパの人々が経営するロッジの部屋に泊まることになる。ツアーでも、よほど大人数でなければ同様みたいだ。
予約は不要、というか予約できない。ほとんどがベッド2つのツインルーム。宿泊料は安く、人数に関係なく1部屋100Rs〜300Rs程度(単独の人は値引き交渉できるかもしれない)。朝夕の食事は必ず宿泊するロッジでとるのが決まり。私たちは目的地に着くと、あらかじめネットで調べておいた評判の良いロッジへ行くか、団体ツアーが来なさそうなこじんまりとして清潔で設備の良さそうな所へ行き(どこも似たようなものだけど)、部屋やトイレを見せてもらってから決めるようにしていた。
着いたら部屋に通される。ただそれだけ。何かに名前を書いたり、パスポートを見せたりということは一切ない。名前を聞かれることすらない。「ジャパニーズの夫婦」とか「マッチョなアメリカン」とか、宿の人たちの間では、そんな風な言い方で客を識別しているに違いない。
部屋にはベッド、毛布、枕があるのみ。照明はいちおうあるけれど、電気が弱いため暗く、標高が高くなるほどますます暗くなる。ゴーキョでは部屋に照明はなかった。ゴミ箱もあったりなかったり。いちおうどこのロッジも、ドアに南京錠はついている。
トイレ、水場はロッジの中にあったり外にあったり、水場がないところもある(トイレのあとに少し手を洗う程度の水は用意してある)。基本的に標高が高くなるにつれ設備が不便になるのはしかたのないところ。
食事はダイニングでとる。だいたい17時を過ぎてから。メニューとオーダーブック(帳面)をもらい、自分の部屋番号が記されたページに食べたいものを書く。部屋番号が書いてなければ自分で部屋番号を書く。翌朝も、そのページにオーダーする。ストーブはダイニングにしかないので、寝るまでだいたいみんなここに集まっている。
宿泊料、食事、シャワー、ダイニングで買った菓子など、一切の料金はチェックアウト時にまとめて支払う。

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ナムチェのタワロッジ。
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パンボチェのヒマラヤンロッジ。
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ディンボチェの
マウンテンパラダイスロッジ。
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ロッジのダイニングは、
どこもこんな感じ。

山の食事

よく食べたメニューは、フライドライス(焼き飯)、チョウメン(焼きそば)、シェルパシチュー、スープ類、ダルバート(ご飯と豆のスープと野菜のおかず)、モモ(ぎょうざ)、スプリングロール(春巻きというよりパイっぽかった)、ボイルドポテト、ララヌードル(インスタントラーメン)。スパゲッティーやピザ、サンドイッチといった洋食もあるのだけれど、見るからおいしそうではなかったので注文しなかった。実際、食べ残している欧米人をよく見かけた。
オーダーブックに注文の品を書き込み、それをロッジの人に渡してから料理が出てくるまでの時間は、まちまち。10分位のこともあるし、1時間後のこともある。最長で2時間かかったことも(すいている宿ほど時間がかかった)。しかし全体的には、恐れていたほどではなく、まあまあの時間で出てきたと思う。朝食はいつも、手早く出来るパンケーキ、トースト、チャパティーなど頼んだ。

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シェルパシチュー じゃがいも・にんじんなどの野菜、小麦粉のだんご、パスタ、ヌードル、米などそのときどきで材料は異なるが(おそらくあまりもの?)ボリュームたっぷりであったまる。カレースープのようだったり中華スープのようだったり味もいろいろ。マッチェルモの主人は「味の素」を使うと言っていた。
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写真はカトマンズで食べたダルバート。山では、おかずの品数は少ないものの量が多い。豆のスープは、甘くないぜんざいか味噌汁のような感じ。おかずはたいてい野菜を炒めたもの。カトマンズではカレーっぽくかなり辛いが、山ではほとんど辛くなくあっさり。たいていおかわり自由。
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モモ。中身は野菜、じゃがいも、バフ(水牛の肉)、など。チリソースっぽいタレがついてくる。
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パンケーキ。ジャム、バター、ハチミツなど、付けるものを選ぶ。チャパティーもほとんど同じような感じ。
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休憩に入ったロッジにて、ショートポットで頼んだホットレモン。1Lぐらい入っている。少し飲んで、のこりはナルゲンボトルに入れて歩きながら飲んだ。ネパールではミルクティーが主流だが、ほかにもインスタントコーヒーやホットオレンジ、ジンジャーティー、レモンティー、ココアなんかもあった。

初めの頃はミルクが不安だったので、ブラックティーなどミルクの入っていないものを飲んでいたのだけれど、ゴーキョのロッジのおばさんにミルクコーヒーをおごってもらってからはあまり気にしなくなった。2人とも旅行期間中食べ物でお腹をこわすようなことはなかった。

キュウさんのお気に入りメニューは、フライドライスとチョウメン。でもこれらはロッジによってあたりはずれが大きい。辛いものが苦手なキュウさんにとって、辛い味付けの時は最悪だ。
トモさんのお気に入りはダルバート。はずれが少ない。一番おいしかったのはポテトスプリングロール。揚げ物だから体調が悪い時はきついけど。

山のトイレ

山ではロッジにしかトイレはないので、トレッキング中は、お茶がてら適当なロッジに立ち寄って借りる。トレッカーが勝手に使わないよう、昼間トイレにはカギをかけているところが多い。
ネパールではトイレットペーパーを使う習慣がなく、トイレにペーパーはない。また、水洗洋式でもペーパーを流してはいけない(空港や都市部のホテルは別)。ただし街道上は外国人トレッカーの利用がほとんどなので、使用済ペーパーを捨てるゴミ箱は必ず備え付けられている。
汲み置きの水と手桶があり、用を足したら、自分で水を汲んで便器内に流す。ロッジのトイレは、和式によく似たネパール式トイレと、洋式トイレがほとんど。どちらも水で流すので臭くない。たまに水の乏しい地域のロッジでは、かなりエコロジカルなトイレもある。いわゆるボットンで、ベニヤの床にあけられた穴から用を足し、済んだらすぐそばに積まれた落ち葉や草をかけておく。肥料にするのだろうか?最初はちょっと躊躇したけれど、臭くないので日本の山小屋のトイレに比べたら快適かもしれない。
親切な主人がいるロッジはトイレもきれい、な気がした。

高山病体験

5350mまで行ったけれど、キュウさんはまったく症状無し。ゴーキョピークで、スパスパ煙草を吸ってたくらいだ。まだまだ登っていけそうだった。トモさんはパンボチェあたりから夜中頭痛。ディンボチェで胃痛、はきけ。ロブチェで胃や顔がケイレンし、ロブチェの全ロッジが満室だったこともあって、カラパタールは断念。高山病で胃痛になるものなのかわからないけれど、翌日パンボチェまで下りたらすっかりよくなった。
ダイアモックスをあまり信頼していなかったのでそれまで使用しなかったが、マッチェルモで思い切って1/2錠飲んでみた。その後あまりの頻尿(副作用)で1日2回1/3錠に減らしたが、ゴーキョまで高山病の症状は出ず。さすがにゴーキョ・ピークでは胃・顔・手足がケイレンしてきたので、すぐ下りてゴーキョのロッジでダイアモックスを飲み休んでいると治った。
夜中に頭痛を感じた場合、深く腹式呼吸をすると治った。でも眠ると呼吸が浅くなってまた痛くなる。寝て、起きて腹式呼吸、また寝て、の繰り返し。
あとは水分補給と身体を冷やさないこと、寝すぎないこと、ゆっくり歩くことがポイント。ロブチェ付近で相当苦しんだのは、全ロッジ満室による不安と動揺から、急いで行動したのが失敗の原因。

map ダイアモックス(右)と浄水薬。使用方法や副作用などは事前にネットなどで調べておいたほうがよい。
100Rs/10錠(タメルで購入)


旅の予定と準備ルクラ〜パクディンナムチェ・クムジュンパンボチェディンボチェ・チュクン
ロブチェ・トゥクラペリチェ〜パンボチェ〜ポルツェ・テンガ〜ドーレマッチェルモ〜ゴーキョ
ゴーキョ・ピークドーレ〜クムジュン〜ナムチェ〜ルクラ|宿と食事とトイレと高山病|番外編 カトマンズ生活

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