鳳凰三山(地蔵岳・観音岳・薬師岳)

■南アルプス■2009年10月12日〜13日■テント泊
■行程[行動時間]
1日目 青木鉱泉〜(ドンドコ沢)〜鳳凰小屋〜地蔵岳〜赤抜沢ノ頭〜鳳凰小屋分岐〜鳳凰小屋[9時間]
2日目 鳳凰小屋〜鳳凰小屋分岐〜観音岳〜薬師岳〜(中道)〜青木鉱泉[7時間]
■メンバー:トモさん、キュウさん(報告者)、トモパパ、トモママ

絶好の天候に恵まれ、明るい稜線と大展望を楽しむ。

「アルプス入門編」などと紹介される山は、どうも敬遠して後まわしになってしまう。たとえば、常念岳、五龍・唐松岳、千丈ヶ岳、そして今回の鳳凰三山がそうだ。しかし入門編の山という言葉には、単に「楽に登れますよ」だけでなく、「楽なうえに短時間で見所いっぱいですよ」という意味が含まれる。そのことを昨年の常念岳〜蝶ヶ岳で体感した。果たして鳳凰三山はどうだろう。

前日

地域行事の用事を済ませ、16時に大阪を出発。3連休の中日からなのか、それほど車は多くはなく、近畿自動車道も名神高速もすいすい走れる。しかし案の定、彦根あたりから込み出してきた。結局小牧ジャンクションまでノロノロ運転、中央道に入ってからは渋滞はなかった。韮崎インターで高速を降り、2003年にできた林道御庵沢小武川線(舗装)で青木鉱泉に向かう。カーナビは未舗装の旧道(林道小武川線)しか誘導しないらしいので注意が必要だ。日付が変わる頃、青木鉱泉駐車場に到着。車の脇に2基のテントを設営し、3時間ほど仮眠した。

青木鉱泉

青木鉱泉。


10月12日(月・祝)1日目
天を突くオベリスクに、脚も心も震える。

オベリスク

北御室から見たオベリスク。


6時、出発。青木鉱泉前の水場で水を汲んでいると、宿のスタッフが駐車料金の徴収にやってきた。2日分を払う。ドンドコ沢は最初の間、川沿いルートと山ルートに分かれるが、ネットのレポによると、山ルートはアップダウンがあるので川沿いルートがおすすめとのこと。それで川沿いルートを選択した。

最初の1時間ほどは楽だったが、それ以降は徐々に傾斜がきつくなる。でもそれほどたいしたことはない。ふと何かを感じ前方に目をやるとカモシカがいる。距離は30mほど。じっとこちらを見ている。久しぶりに見るカモシカだ。人慣れしているのか、我々が歩き出してもまったく逃げようとしなかった。

コースタイム通り、出発から2時間で南精進ノ滝の道標があるところに着く。ここは休憩に最適である。で、道はここから少しの間、二手に分かれる。右は滝を見ることはできないが歩きやすい道。左は滝を見れるがフィックスロープを使う急斜面の道。我々はザックを置いて、空身で滝までを往復することにした。

道標から滝までは150mほど。5分もあれば行ける。南精進ノ滝はなかなかのもので、見応えがある。近すぎて普通のレンズでは全体をおさめられないほどだ。数日前の台風直後なら、水量はもっと多くて、すごい迫力だったに違いない。

10時、白糸の滝に着く。ガスってよく見えないだろうと、滝へはトモさんだけが行った。

10時30分、五色ノ滝の道標のところに到着。滝を見るには斜面を少し下りなければならず、やはりガスのため滝を見に行くのはパスした。

傾斜がゆるくなると、突然広い河原に飛び出す。そこが北御室。なんでも昔は北御室という小屋があったらしい。北御室であることを示す道標はないが、それまでの樹林帯の風景から一変するので、すぐにそれとわかる。視界が良ければオベリスクここではじめて拝むことができる。皆、写真撮影に熱心だ。

ナナカマド

ナナカマド。


12時、鳳凰小屋に着く。青木鉱泉から約6時間。休憩を含めれば、まあ妥当な時間だ。手続きをしてテントを設営。テント場は広くはないが、完全フラットなので、混雑時も整然と詰めれば、30や40張くらいは設営できるかもしれない。

棒ラーメンを食ったあと最低限の荷物で地蔵岳に向かう。小屋素泊まりのトモパパ&トモママは一足先に出発してもらった。30分も歩くと足下は砂地になり、やがて森林限界を越え、視界が一気に開ける。オベリスクはすぐ目の前。しかし砂地の急斜面なので、思うように早くは進まない。

賽の河原に荷物を置いて、オベリスクを登頂することにする。

オベリスク基部は大きな石がたくさん積み重なっていて難儀だが、手を使えば、まあ誰でも近づくことができる。問題は最後の岩塔。フィックスロープが垂れ下がっていて、5mほどの垂直に近いクラックをほぼ腕力だけで登っていかなくてはならない。足の置き場はほとんどない。それでも最初はクラックに身をあずけられるので恐怖心は薄らぐが、最後の一歩のなんと怖いことか。最後の一歩だけはどうしてもクラックの外側に足をのせなければならず、バランスをくずしはしまいかと思うと足が出ない。このまま下りようと何度も思った。それでもなんとか勇気を出して登りきった。

オベリスクのてっぺんは1m×1.5mほどの平らなスペースだが、立つのが怖くてしばらく正座したまま過ごした。下のトモパパから「写真を撮るから立って!」と声がかかるも「怖くて無理です!」と答える。でも他のギャラリーが見ていることもあり恥ずかしいので、これまた勇気を振り絞って何とか立った。足はすこし震えていた。

負傷

キュウさん負傷。


下りも登りのときと同じ場所、最初の一歩が怖い。そして登りのときより怖い。岩肌で擦ったのか手の甲から血が出ていることに気がついたのは、オベリスクから下りて、しばらくしてからのことだった。


14時30分、トモパパとトモママは体力温存のため鳳凰小屋へと引き返し、我々は鳳凰小屋分岐まで観音岳方向に稜線を南下する。さすがに稜線に吹く風は冷たい。ガスで視界が悪く、期待していた甲斐駒や北岳は見ることができなかった。

カラマツ

カラマツの黄葉。


15時30分頃、鳳凰小屋分岐で縦走路からはずれ、近道と呼ばれる道で鳳凰小屋へと向かう。

16時、鳳凰小屋に戻る。すぐに夕食をとり、18時30分に就寝。連休最終日とあって、テントはわずか5張り、小屋の客も少ないようで、静かな夜となった。

カモシカ

カモシカ。


南精進ノ滝

南精進ノ滝。


白糸の滝

白糸の滝。ガスっててよく見えません。


北御室

北御室の紅葉。


鳳凰小屋直前

鳳凰小屋近くの岩場。絶景。


鳳凰小屋テント場

鳳凰小屋テント場。


地蔵岳

地蔵岳。


賽の河原

賽の河原。なんとも不気味。


オベリスク。

オベリスク。一人で登る。


バンザイ

せっかく立ったのにボケてる。


オベリスク

稜線からオベリスクを振り返る。


赤抜沢ノ頭

赤抜沢ノ頭。ガスで何にも見えない。


鳳凰小屋

鳳凰小屋。


コケモモ

コケモモ。


10月13日(火)2日目
日本庭園を思わせる素晴らしい稜線。

甲斐駒ヶ岳

観音岳から望む甲斐駒ヶ岳とオベリスク。(トモパパ撮影)


昨晩の泊まり客は皆のんびり派のようだ。天気は良さそうなのに、5時になっても誰も外に出てこない。5時45分、静かな鳳凰小屋を後にし、近道で観音岳をめざす。

千丈ヶ岳

鳳凰小屋分岐から千丈ヶ岳を望む。


1時間きっかりで鳳凰小屋分岐に出、そこから20分で観音岳に着いた。観音岳山頂の展望は素晴らしい。空気が澄んでいることもあり、360度、かなり遠くまで見渡せる。近い山では、甲斐駒、千丈ヶ岳、北岳に代表される白峰三山、悪沢岳、赤石岳、富士山、八ヶ岳、遠くには、槍・穂高、乗鞍、立山・劔、白馬、火打・妙高、瑞牆山、金峰山などなど。今年クレヨンしんちゃんの作者が亡くなった荒船山も確認できる。劔や白馬などは初冠雪で真っ白だ。それにしても北岳が近い。

鳳凰小屋分岐

鳳凰小屋分岐。その向こうに赤抜沢ノ頭と地蔵岳。


観音岳山頂

観音岳山頂。


八ヶ岳

観音岳山頂から見た八ヶ岳。


白峰三山

観音岳山頂から見た白峰三山。


薬師岳小屋方向から続々と人がやってきたので山頂をゆずり、薬師岳に向けて、白砂と岩のコントラストが美しい稜線を漫歩する。めざす薬師岳のそのまた向こうに富士山があるというのが爽快だ。

薬師岳へ

薬師岳へ向かう稜線。


観音岳

薬師岳より観音岳を振り返る。


約30分の極上トレイルを楽しみ、8時30分。薬師岳から中道で青木鉱泉に下山をはじめる。中道は途中御座石という巨石があるのみで、特筆すべきものはない。地図には悪路と書いてあって、実際悪路というほどではないが、少し歩きにくく、面白い道ではない。

製紙会社による針葉人工樹林帯にさしかかると、中道も終盤。歩きやすい道となる。

11時50分、林道に降り立つ。ここが中道登山口。そこから40分林道を歩き、12時30分に青木鉱泉に戻ってきた。

前週の台風により紅葉は楽しめなかったが、2日間とも天気は申し分なく、鳳凰三山の魅力を存分に味わうことができた。もしまた来る機会があれば、黒戸尾根〜甲斐駒〜鳳凰三山〜夜叉神へと縦走してみたい。

(下山後、富士五湖周辺をドライブし、麓からの富士山絶景を堪能。沼津にビジネスホテル宿泊し、沼津の名店「山正」で駿河湾を中心とする海の幸を堪能した。)

富士山

薬師岳の向こうに富士山。


薬師岳

まもなく薬師岳山頂。


中道

中道。


ゴゼンタチバナ

ゴゼンタチバナ。


中道登山口

中道登山口。ここから40分林道を歩き。


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久木朋子の木版画