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奥駈縦走1(大普賢岳〜太古ノ辻)

大峰山系2008年4月26日〜28日山中テント泊
行程[行動時間]
1日目 和佐又口バス停〜和佐又ヒュッテ〜大普賢岳〜七曜岳〜行者還岳〜一ノ垰[9時間]
2日目 一ノ垰〜奥駈道出合〜弥山〜八経ケ岳〜仏生ケ岳〜孔雀岳〜釈迦ケ岳〜千丈平[10時間]
3日目 千丈平〜釈迦ケ岳〜深山小屋〜太古ノ辻〜前鬼〜前鬼口バス停[7時間]
メンバー:トモさん、キュウさん(報告者)

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大峯奥駈道北部の代表3峰をつなぐ

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自宅から近いこともあり、大峰の山にはしょっちゅう出掛けている。しかし奥駈道を歩くのはいつも細切れ。全行程を一気に歩きたいところだが、なかなかそうもいかないので、3回程度に分けて縦走(山上ケ岳前後の女人禁制部分を除く)したいと思う。今回はその1回目。大普賢岳から釈迦ケ岳にかけての、いろんな意味で最も華やかな区間だ。尚、1日の歩行時間が長いので、テントはアライテントのエアライズ1(1人用、最大2名)で軽量化し、万一に備え水をなるべくたくさん携帯するようにした。

大普賢岳
国見岳付近から眺めた大普賢岳。

4/26(土)1日目 大普賢岳から奥駈道歩きをスタート。


3時すぎに自宅を発ち、5時前和佐又口に着く。トイレ横駐車場に車を置き、出発。和佐又ヒュッテまで行かずにここに駐車したのは、最終日バスでここまで戻ってきて、疲れた体でヒュッテまで登り返すのを嫌ったためである。3日間車をここに置きっぱなしにするのはいささか躊躇されたが、キズだらけの小さな4駆には誰も気を留めないであろう。



まずは和佐又ヒュッテまで1時間強の林道歩き。道は単調だが、トラツグミやオオルリ、ツツドリの声が響き渡り、耳は退屈しない。GW初日なのに、意外にも車が追い越していくことはなかった。




ヒュッテで水の補給とトイレを済まし、大普賢に向けて歩きだす。指弾ノ窟、朝日窟を経て、最も大きな窟である笙の窟で小休憩。鷲ノ窟を越えればハシゴやクサリ場を幾度となく出てくる。ところどころ残雪の上を歩くところもあった。




標準タイムで大普賢岳山頂に着いた。北西方向に山上ケ岳がのぞめる。3月中旬山上ケ岳に登ったが、そのときは1mを越す雪にたいへん難儀した。今も多少は雪が残っているだろう。




風があまりも冷たいので、そのまま水太覗に下り、そこで休憩。おにぎりをほおばる。1年前の今頃、トモさんの両親や甥っ子と大普賢を登り、まさにこの場所で寛いだことが思い出される。(2007/5大普賢岳




七曜岳へはクサリ場などやや注意を要するところが時々ある。途中、10人ほどのパーティーを追い越した。和佐又ヒュッテに宿泊し、早朝に発った人たちと思われる。彼らは七曜岳から無双洞方向へ下りて行った。




七曜岳から行者還岳にかけては多少のアップダウンはあるものの、道幅も広くなり、明るくて快適だ。広葉樹がまだ芽吹いていないのが残念である。




行者還岳山頂は見晴らしもよくないので敬遠し、そのまま奥駈道をつき進み、山頂下部の水場で水を補給し、13:10に行者還小屋に着く。




予定ではここからすぐの天川辻で幕営することにしている。ただ、これから気圧の谷の通過とかで天候が急変し、雷雨の可能性があると天気予報が伝えていたのでちょっと思案する。小屋に泊まるか、やはりテントにするか。休憩がてら30分ほど空模様をうかがうが一向に雲行きが怪しくなる気配がないどころか、良くなってきている。結局、テント泊まりに、しかも天川辻よりもさらに進んで適当な場所で幕営することにした。




15:00、一ノ垰避難小屋に着く。急に風が強くなって曇り空となり、今にも雨が降り出しそう。ここでテントを張ることにする。避難小屋は荒廃しており使えないが、幸いテントを張れる場所が2〜3箇所ある。張り終えた頃、行者還方向から同年代の単独女性がやってきて、その人も近くにテントを張った。聞けば我々と同じ今朝和佐又口を出発し、あさって前鬼に降りるという。




結局、この日は夜中に少し雨が降っただけだった。



和佐又ヒュッテ
和佐又ヒュッテ。

ハシゴ
大普賢岳頂上までいくつものハシゴがつづく。

奥駈道
奥駈道に入る。

山上ケ岳方面
大普賢岳頂上より山上ケ岳方向を眺める。

 マンサク
木々はまだ芽吹いていない。
マンサクが花盛り。


 下り道
弥勒岳の下り。

七曜岳
七曜岳下、無双洞へのわかれ道。

 道標
世界遺産になって立派な道標ができた。英語表記もある。

 行者還岳下の水場
行者還岳下の水場。今晩の水を汲む。

行者還小屋
行者還小屋を後にする。

一ノ垰
一ノ垰にテントを張る。水場なし。

4/27(日)2日目 八経ケ岳と釈迦ケ岳。近畿屈指の高峰から高峰へ。
釈迦ケ岳
仏生の横駈付近から眺めた釈迦ケ岳。


午前3時に起床し、5時、夜明けとともに一ノ垰を発つ。ほどなくして奥駈道出合を通過し、弁天ノ森ヘ。気持ちの良い所なので昨日このあたりまで来て、テントを張ってもよかったかなと思う。


聖宝ノ宿跡を越えれば弥山への急な登りが始まる。それにしても風が冷たい。鼻は出るし、手がかじかむ。標高を上げるにつれ、日当たりの悪い場所では残雪も目立つようになってきた。キョロンキョロンと鳴くのはアカハラ。寒さの中、とても元気だ。


昨夜弥山小屋に泊まったであろう人と何人かすれ違い、そのたびに「どこから来たのですか?」と尋ねられる。多くの人が利用するトンネル西口から登りにしては、時刻が早すぎるからだ。


7:15、弥山小屋着。気になっていた新設の公衆トイレを偵察。オープンしたばかりなのでとても清潔。もちろん有料(100円)である。国見八方覗の幕営地にはテントが2つ3つ。昨晩はさぞかし寒かったであろう。




8:10八経ケ岳山頂に立ち、歩いてきた大普賢方面、これから歩く釈迦ケ岳方面をカメラにおさめる。




10分ほど歩いて明星ケ岳ピークをわずかに巻けば、道はほぼまっすぐ釈迦ケ岳に向けて南下する。トウヒやシラベの原生林が大峰らしさを漂わせ、ルリビタキがあちこちでさえずって、気持ちをなごませてくれる。




陽が高くなるにつれ、気温がどんどん上昇。弥山までの寒さがうそのようだ。暑くもなく寒くもなく快調に距離をかせぐ。ただ、明星ケ岳〜舟ノ垰間はちょっとした岩場もあり、踏み跡も比較的うすい。そのぶん、古人も往来した奥駈道を歩いているんだ、ということを実感させてくれる。


舟ノ垰が近づいてくると、右手の視界が開け、右下手に広大な草地が広がる。神仙平だ。神仙平は斜面の大崩落によって形成され、その際に舟ノ垰のくぼみもできたと何かで読んだことがある。何万年前か何十万年前か、はたまた何百万年前の出来事かは忘れた。


11時過ぎ、楊枝ノ宿小屋に着き、ラーメンの昼食。小屋裏手から2〜3分下ったところにある水場で水を補給する。最初は我々だけだったが、前鬼から吉野に縦走する単独の青年、昨晩同じ所にテントを張った女性、10名ほどの年配のパーティーが到着し、賑やかになる。このパーティーは装備の少なさから察するところ、昨晩は前鬼の小仲房に宿泊し、今晩は弥山小屋に泊まるみたいだ。




仏生ケ岳を越えてからは鋭峰の釈迦ケ岳がぐんぐんと目前に迫ってくる。孔雀岳近くの鳥の水(涸れやすい水場だが、3日前雨が降ったのでこの日はしっかり出ていた)を過ぎれば、釈迦ケ岳へはあとひと息。いかにも難所らしいネーミングの「杖捨て」手前でいったん休憩し、最後の急登。15:30、釈迦像が立つ釈迦ケ岳山頂にひょっこり出た。今日の行程はほぼ終了だ。


奥駈道をはずれて旭口方面にほんの少し下った千丈平で幕営。ここの水場「行者のかくし水」は枯れていたという報告を目にしたことがなく、安心である。しかもとびきりおいしい。この日のテントは我々を含め3張だった。

シカ
ここはいつもシカが多いな。


弁天の森
弁天の森。

弥山への登り
雪の残る弥山への登り。寒い。

八経ケ岳
弥山から眺めた八経ケ岳。

釈迦への尾根道
八経ケ岳頂上より眺めた釈迦ケ岳へ続く尾根道。

八経ケ岳下り
明星ケ岳付近。

神仙平
神仙平。以前ここを登って奥駈に出た。

楊枝ケ宿
楊枝ケ宿。水場あり。

孔雀覗
孔雀覗からの眺め。

釈迦ケ岳への登り
杖捨て付近。山頂直下も厳しい登りが続く。

八経ケ岳方面
釈迦ケ岳頂上より八経ケ岳方面を眺める。

千丈平
千丈平。良質の水場あり。

4/28(月)3日目 太古ノ辻で今回の奥駈道歩きは終了。前鬼へ下山。
尾根道
釈迦ケ岳から下るクマザサとシロヤシオの尾根道。


今日は14:58のバス時刻までに、前鬼口に着けばよい。のんびりと朝を過ごし、7:00に千丈平を出発。いったん釈迦ケ岳山頂近くまで登り返し、奥駈道に合流、ふたたび南下する。



それにしても釈迦ケ岳界隈はシロヤシオの木が多い。花にはまだ1ケ月程度早いらしく、なんとも残念だ。



30分ほどで気持ち良さそうな明るい草地が現れる。深仙ノ宿だ。昨晩ここに幕営しなかったのは、水場の香精水があてにできなかったから。枯れているという報告が多い。しかしこの日は細いながらもなんとか出ていた(5分で500cc溜まる程度)。



さらに30分進むと太古ノ辻に到着する。立て札に「これより南奥駈」と大きく記してある。そして我々の今回の奥駈歩きはこれで終了。左に折れ、前鬼に下るだけだ。








太古ノ辻〜前鬼間は迷いやすいらしく、そのため道標がひんぱんに設置されている。また、以前来た時に較べ、階段が数多く設置されている。






ぐんぐん標高を下げ、それにつれて樹の種類が見慣れたものに変わってくる。沢沿いなので特に栃の木が目立つ。足元を見れば栃の実がいっぱい落ちている。








11:00に前鬼に着き、小仲房のキャンプサイトをお借りしてラーメンの昼食をとる。しっかり食べておかないと、前鬼口までの3時間近い林道歩きに耐えられそうもない。



変化のない林道歩きはとても辛いが、センダイムシクイやオオルリのさえずりがいくぶん気持ちをやわらげてくれる。また林道脇の斜面ではじめてヒカゲツツジを見ることができた。車なら絶対気付かなかっただろう。



前鬼を発ってきっかり3時間後の14:00、前鬼口バス停にゴール。1日2便しかないバスがやってくるまでは1時間近くもある。自販機のジュースとコーヒーを買って飲みながら、下界に戻ってきたことをしみじみとかみしめた。

バス停
バス停。公衆電話なし。携帯も入らない(ソフトバンク)。

バス
小さなバスがやってきた。


深仙ノ宿
深仙ノ宿。水場があるが水量少なし。

大日岳
大日岳。

太古ノ辻
太古ノ辻。これより先はまたいつか。

二つ岩
二つ岩。

沢道
沢沿いに下りて行く。木々は芽吹き、ヤマザクラやツツジが咲く。

トチの実
トチの実。沢沿いにはトチの木が多い。

小仲房
小仲房。立派な山小屋だ。

林道入口
しばらく山道を下り、吊り橋を渡ると林道へでる。

ヒカゲツツジ
林道脇に咲いていたヒカゲツツジ。

七重の滝
林道から眺めた不動七重の滝。

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