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馬ノ鞍峰

台高山系2006年5月3日〜4日山中テント泊
行程[行動時間]
1日目 三之公林道終点(明神出合)〜カクシ平〜馬ノ鞍峰〜霧ノ平[6時間]
2日目 霧ノ平〜馬ノ鞍峰〜地池越〜山ノ神ノ頭〜三之公林道終点[6時間]
メンバー:トモさん、キュウさん

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ゴールデンウィーク、台高のど真ん中を行く

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台高山系で、行くのはいつも明神平界隈。ちょっと足を伸ばすといってもせいぜい池小屋山までだ。そこから南部は、大台ケ原を除き未体験ゾーン。いつかはいかんと気にはしていたが、このところ三之公林道から馬ノ鞍峰へ行く人が増えているという。ゴールデンウィークを利用して台高縦走をやっている人にとっては、ひやかしみたいなものだが、お気楽に台高核心部の懐に抱いてもらうことにした。日帰りでもいいのに、わざわざテント持参でユルユル山行。

5/3(水・祝) 1日目 霧ノ平は、やはり霧に包まれていた

入之波温泉を過ぎ、三之公林道を走る。ゴールデンウィークとはいえ、このあたりまでくるとさすがに普通の行楽客の姿はない。山屋か釣り師だけだ。終点手前にバイオトイレがあり、使わせてもらう。おがくずを撹拌するウィーンという電動音がする。トイレから100mくらいで林道終点。駐車スペースは15台くらいの車でほぼ満杯。なんとか停める。


10時半出発。三之公川に沿ってカクシ平をめざす。右岸の斜面につけられた道で、川はかなり下を流れている。蒸し暑い。この道は初夏から秋にかけてはヤマビルの多さで知られているが、この時期にはいるはずはない。そう思うのだが、時々足下を見てしまう。それにしてもオオルリのさえずりが心地良い。


12時、かくし平到着。ここで細くなった三之公川を道がまたぐ。いい時間なのでこの水際で昼食。ラーメンすすっていると、ミソサザイが目の前の岩のお立ち台で美声を披露してくれた。春だ。


川を渡ってすぐ上に行宮所がある。15世紀なかば、北朝方を避けた南朝の尊義王が2人の子とともに隠れ住んだ場所。薄暗い谷間だが、それは植林による杉のせいであって、以前はもっと気持ちよい場所だったのかもしれない。


やや急な斜面のつづら折れの道を我慢すると、馬ノ鞍峰にまっすぐ伸びる尾根にひょっこり出る。栂やリョウブの大木が目を引く。そこから歩くこと40分、ようやく馬ノ鞍峰に着いた。ここからは台高縦走路を少し北上、今日の泊まり場である霧ノ平をめざす。距離はたいしたことないのだが、道はそれまでに比べすこぶる悪くなる。痩せ尾根で木の根っこがむき出しになっていて歩きにくい。しかもブッシュ気味だ。ザックに装着したリッジレストが何度も木に引っ掛かり、通せんぼさせられる。


何度かアップダウンすると、ブナが芽吹く気持ちの良さそうな平地が見えてきた。霧ノ平だ。先客は4人組のパーティのみ。聞けば、池小屋山までピストンを試みたが、途中であきらめて引き返したらしい。水場は東側をほんの少し下ればある。いわゆる苔清水で、水量は多く、きれいでおいしいかった。


陽も暮れてきたのでレトルトカレーで簡単に夕食を済ます。外に出ると霧が一面を覆っていた。静かだ。コノハズクの鳴き声が盛んに聞こえだした8時頃、早いと思ったが就寝ス。


たそがれ
たそがれの霧ノ平

三之公林道登山口
三之公林道登山口

明神滝
明神滝

三之公林道登山口〜馬ノ鞍峰間
登山口〜かくし平間

三之公行宮趾
三之公行宮趾

尾根上に出た
尾根上に出た

痩せ尾根
あと少し登ると馬ノ鞍峰

霧ノ平
霧ノ平が見えてきた

水場
水場

5/4(木・祝) 2日目 台高縦走路をプチ体験。道はずしに気をつけて

さて、今日は台高縦走路のど真ん中がどんなものかちょっぴり体験してみよう。7時出発。まずは昨日踏んだ馬ノ鞍峰に引き返す。そこからさらに南進。ウーン、やはり痩せ尾根だ。アップダウンも何度も繰り返す。5月初旬だからいいものの、もう少し暑い時期だったらかなり体力が消耗させられるな、と思った。とはいうものの、休憩に適した平たんで広々とした場所も時々現れる。


地池越10時45分着。予想以上に狭いテント適地だ。3張りが精一杯だろうか。ここで大台からやってきた縦走中の単独の男性と出会う。なんでも昨日道に迷って縦走路をはずしてしまいビバーク。1日余分に使ってしまったので、もう明神平には向かわずにかくし平を経て下山したい、入之波温泉でさっぱりして早く家に帰りたい、とのこと。「台高はやっぱり恐いわあ」としきりにおっしゃていた。全体的にテープは多いが、なにしろ踏みあとが心細く、霧が出るとたしかに迷う可能性は高いかもしれない。


12時ちょうどに山ノ神ノ頭に着く。ここでテント装備の男女2人のパーティーと会う。ここから大台方面へ行ったところにあるブナノ平でのんびりするという。自分も機会があればブナノ平で一度泊まってみたい。


山ノ神ノ頭からは登山口へと下るだけだ。昨日以上に栂の大木が目を引く。ブナも大きく、地面にはブナの実がたくさん落ちていて、少しポケットにしのばせる。庭に植えてみよう。そして芽がでたら再び山に返そう。


やがて、まっすぐ下るルートと、キノコ股谷を下るルートの分岐にさしかかる。時間的にはまっすぐ下ると早いのだが、キノコ股谷ルートを選択。しかしこの道、はっきり言って安全ではない。最初はズルズルと崩れる急な斜面を慎重に下る。沢に降り立ってからは右岸を行ったり左岸を行ったりルートファインディングに忙しい。何より危ないと思ったのは後半。急角度の右岸につけられた危うい水平道をかなり歩くのだが、落ちたら川へまっさかさま。クサリがあるところはいいが、ないところもある、そんなところはもろい足下が崩れないことをただ祈るのみだ。2時間近くかかってようやく昨日歩いた登山道に合流。ここにあった看板に「(キノコ股谷は)通行禁止」と書かれていた。やはり危険なんだ。ここから車のところまでは15分もかからなかった。


落ち着いて休憩できなかったので、登山口の広々とした河原で遅い昼食をとる。そこへ沢装備のワンゲル部らしき10数名のパーティがやってきた。今日はここで幕営して、明日遡行するようだ。どうぞ気をつけて。しかし今回は、台高の奥深さを知るには十分な山行だった。いつかは縦走しよう、とトモさんと意見も一致した。

痩せ尾根
歩きにくい痩せ尾根が続く

サルノコシカケ
巨大なサルノコシカケが目を引く

開けた斜面
ひらけた所はうっかりすると道をはずす

山ノ神ノ頭
山ノ神ノ頭

Nの木
Nの木

キノコ股谷1
キノコ股谷へ降りる

キノコ股谷2
倒木をそのまま利用したハシゴ

キノコ股谷3
キノコ股谷沿いの危険な道

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久木朋子の木版画